ヨコハマ・パラトリエンナーレ2020|障害を超えた現代アート国際展が開幕!

ヨコハマ・パラトリエンナーレ(通称パラトリ)は“障害者”と“多様な分野のプロフェッショナル”による現代アート国際展。

本来であれば東京パラリンピック2020の開会式前日だった8月24日、新型コロナウイルス感染拡大防止のためオンラインと横浜市役所の2会場でプレオープンを迎えました。

オンラインとリアルが融合した全く新しい形での開催となった今年のパラトリ。

当日は横浜市のみなとみらい本町小学校5年生を対象に公開授業が行われ、パラトリの総合ディレクターである栗栖良依氏の話に熱心に耳を傾けながら、住みよい社会づくりについて考えました。

ヨコハマ・パラトリエンナーレ2020とは?

パラトリとは、3年に一度開催される“障害者”と“多様な分野のプロフェッショナル”が協働する現代アート国際展。

横浜市の文化オリンピアードとして位置づけられ、 発展進行型プロジェクトとして、障害のある・なしに関係なく文化芸術活動に参加したいと思う誰もが、出会い、そして 共(ともに)創(つくる)アートプロジェクトの先駆者として誕生しました。

2014年の「はじめてに出会える場所」、2017年の「とけあうところ」に続き、2020年は「our curioCity ‒好奇心、解き放つ街へ-」をテーマに4つのプログラムを展開します。

総合ディレクターには、自らも脚に障害を抱えながら、障害者とアート、そして社会の間にあるバリアを取り払うべく活動を 広げる、栗栖良依(くりす・よしえ)氏が就任。

栗栖良依(くりす・よしえ)氏

パラ・クリエイティブディレクター/プロデューサー、SLOW LABELディレクター、東京2020開会式・閉会式4式典総合プ ランニングチームクリエイティブディレクター。2008年より、過疎化の進む地域で市民参加型パフォーマンス作品を 制作。2010年、骨肉腫をきっかけに右下肢機能全廃。2011年に「SLOW LABEL」を設立し、2014年「ヨコハマ・パラトリエンナーレ」を立ち上げ総合ディレクターに。障害のある人が芸術活動に参加するための環境整備や支援人材の育成に取り組む。リオパラリンピック閉会式・旗引継ぎ式ステージアドバイザー。第65回横浜 文化賞「文化・芸術奨励賞」受賞。

「our curioCity ‒好奇心、解き放つ街へ」4つのプログラム

2020年のパラトリは、テーマとして掲げる“our curioCity ‒好奇心、解き放つ街へ” をもとに、コア会期である11月18日(水)~11月24日(火)に向けて全4つのプログラムを展開します。

①「パラトリテレビ」

オンラインとリアルが融合するパラトリ2020のメインともいえるコンテンツ。

障害当事者から多様な分野のプロフェッショナルまで、パラトリを通じて出会ってきた人々が集結し、オリジナル番組を制作、YouTubeで配信します。

そしてコア期間には、横浜市役所アトリウムの特設ステージから生配信!番組のプログラムを、オンラインを飛び越えて楽しむことができますよ。

主な出演者・制作者

【ナビゲーター:中嶋涼子(なかじま・りょうこ)】※写真左

9歳の時に原因不明で下半身不随になり車椅子での生活に。 南カリフォルニア大学映画学部を卒業後は日本へ帰国し、映像エ ディターとして働く。2018年に車椅子インフルエンサーに転身し、 YouTubeやテレビ出演、講演活動等を通し、様々な分野で日本(人) をバリアフリー化するための活動に取り組む。

【パペット話者:熊谷拓明(くまがい・ひろあき)】※写真右

2008年よりシルク・ドゥ・ソレイユ「believe」に出演、2011 年までアメリカ合衆国ラスベガスで850ステージに立つ。帰国 後は自身が作/演出を手がけるオリジナルジャンル「ダンス 劇」作品を数多く発表。舞台「夜中に犬に起こった奇妙な事 件」(森田剛主演)振付。ヨコハマ・パラトリエンナーレ 「不思議な森の大夜会」ウサギのダンス劇 演出・出演。

【パラトリテレビディレクター(撮影・編集):鹿子澤拳 (かのこざわ・けん)】※写真上

先天性の聴覚障害がある。幼い頃よりダンスを好む。筑波技術大学ダンスサークル「Soul Impression」に所属し本格的にストリートダンスを学ぶ。SLOW MOVEMENT -Next Stage Showcase & Forum-「聞こえなくても、聞こえても『ダンス 劇』(2017/演出・振付:熊谷拓明)」、ヨコハマ・パラトリエンナーレ2017「現代サーカス’sense of oneness'(演出:金井ケイスケ)」、国際障害者舞台芸術祭True Colours/シンガポール「Seek the Truth-真実を求めて-」(2018/演出・振付: DAZZLE)出演。

パラトリテレビ

配信期間:8月24日(月)〜

視聴無料

★コア会期の見どころ

番組プログラム「みんなでつくろう!井上唯の whitescaper」では、パラトリテレビでつながった全国の仲間(視聴者)たちとともに、whitescaperを作ります。
それぞれ異なる場所で制作したwhitescaperを 1つにつなげ、アート作品として 横浜市役所アトリウムのパラトリテレビ特設ステージに展示します。

展示期間:11月18日(水)〜24日(水)

②BOOK PROJECT「そのうち届くラブレター~わかりあうことの不可能さと、あきらめないことについての考察~」

障害のある表現者と多分野のアーティストによる、読む展覧会「そのうち届くラブレター」

パラトリエンナーレ第3回目となる美術展は、これまでの取り組みの延長線上に立ち、「障害」とは何か?を根底から問うテーマを設定。

人間が誰しも抱える、わかりあうことの不可能さを見据えながら、その絶望を乗り越えていく視点・姿勢をもった6人の作品に対し、8人と1組の表現者たちが それぞれの方法で彼らの作品への応答を試みます。

※本展は、読む展覧会としてブック(本)の形式で編まれ、公式ウェブサイトでも展開されます。

主な参加アーティスト

ジェス・トム

作家、アーティスト。自身のトゥレット症候群(チックの一種)を創造的に昇華するため、2010年にトゥレットヒーロー(Touretteshero)を共同設立。自伝的作品「Backstage in Biscuit Land」やサミュエル・ベケットの不条理演劇をもとにした「Not I」は、アンリミテッド・フェスティバルやエジンバラ・フリンジなどで上演され、高い評価を受けている。
(Photo:James Lyndasy)

山本高之(やまもと・たかゆき)

1974年愛知県出身。小学校教諭としての経験から「教育」を中心テーマのひとつとし、子供のワークショップをベースに会話や遊びに潜む創造的な感性を通じて、普段は意識されることのない制度や慣習などの特殊性や、個人と社会の関係性を描く。近年は地域コミュニティと協働して実施するプロジェクトに多く取り組んでいる。
(撮影:加藤甫)

井口直人(いぐち・なおと)

1971年生まれ、三重県出身。1987年から「さふらん生活園」所属。街のコンビニと施設のコピー機を使って、自分の顔とその時々の気に入ったものを写し取ることを毎日の日課としている。ガラス面に顔を押し付け、自分でボタンを操作し、センサー光の動きと共に身体を動かすことで、画面に独特の歪みを作り出す。このような行為は、支援員との遊びの中で生まれ、習慣化されたものである。

BOOK PROJECT「そのうち届くラブレター~わかりあうことの不可能さと、あきらめないことについての考察~」

展示期間:11月18日(水)~11月24日(火)

場所:本(横浜市役所で1000部無料配布)/公式ウェブサイト

※横浜市役所展示スペースAで一部作品展示も行います。

参加費:無料

③「 サーカスアニメーション」 /「パラトリみらいサミット」

「サーカスアニメーション」では、両足義足のサーカスアーティストであるエリン・ボール氏をはじめとした世界のサーカスアーティストと、日本初のソーシャルサーカスカンパニー「SLOW CIRCUS PROJECT」のメンバーが、時空を超えたサーカスアニメーションの共創に挑戦!

さらに、コア会期には個性豊かな「SLOW CIRCUS PROJECT」のメンバーと、みなとみらい本町小学校5年生のこどもたちが議論を交わす「パラトリみらいサミット」を開催します。

“全人類アカンパニスト化計画!めざせ、だれかの伴奏者“をテーマに、みんなが暮らしやすい街について考えます。

エリン・ポール

カナダにあるキングストン・サーカス・アーツを主宰するサーカスアーティスト。
2014年3月に両足を失い1年間活動を休止するも、新しい体をクリエイティブに解釈しパフォーマンスを 再開。毎年、肢体切断者のためのサーカスキャンプを主宰する他、国際的に指導とパフォーマンス活動を 積極的に展開している。

エリン・ポール
「 サーカスアメーション」 /「パラトリみらいサミット」

開催日:11月18日(水)~24日(火)

※パラトリみらいサミットの日程は、公式WEBサイトで後日発表!

場所:オンライン/横浜市役所アトリウム

参加費:無料

④パラトリ「フードラボ」「メディアラボ」オンラインゼミ

「食」を切り口に福祉や持続可能な社会について考え、学びあう「フードラボ」と、「伝えかた」をテーマに、多様な立場の 人々と学び合う「メディアラボ」を実施。

プレ会期からコア会期までオンラインゼミとして配信されるだけでなく、コア会期は、横浜市役所アトリウムの特設ステージでリアルイベントも開催します。

パラトリ「フードラボ」「メディアラボ」オンラインゼミ

配信期間:プレ会期〜コア会期
※コア会期のリアルイベントの日程は、公式WEBサイトで随時発表!

参加費:有料

※コア会期のリアルイベントのみ無料

みなとみらい本町小学校5年生への公開授業

ヨコハマ・パラトリエンナーレ2020公開授業(撮影:加藤甫)

プレオープン初日の8月24日、パラトリ会場である横浜市役所ではみなとみらい本町小学校5年生を対象に公開授業が行われました。

ステージにはパラトリ2020の総合ディレクターの栗栖良依氏が登壇。

障害のあるなしに関わらず、みんなが住みよい社会を創るにはどうすればよいのかについて、真剣に考える機会となりました。

みなとみらい本町小学校5年生は、11月から始まるコア会期の「パラトリみらいサミット」に参加します。

ヨコハマ・パラトリエンナーレ6年間のあゆみ

「ヨコハマ・パラトリエンナーレ」のはじまりは、2014年。来場・ 参加者はなんと10万人以上!

障害者とプロフェッショナルが協働する「現代アート展」の開催を通じて、アクセシビリティをはじめとした、社会に溢れる「障害」を実感。

2015~16年は次の開催に向けた準備期間とし、世界的にも珍しい「福祉と芸術に携わる伴奏者」の育成をスタート。

日本で初めて、アクセスコーディネーター(障害のある人がアート活動に参加するための環境を整える人)とアカンパニスト(障害のある人と一緒に創作活動をする人)の発掘と研究に取り組みました。

そして迎えた第2回目は「とけあうところ」をテーマに開催。

第1回目に出会った人々が、その取り組みを時間をかけて醸成させ、年齢・国籍・障害の壁を超えた約100名の市民パフォーマによる大規模野外サーカス作品を発表しました。

2018~19年は2020年に行われる第3回に向けて、サーカスの修練を心身の成長・変化に応用するスクールを開始。

障害者の心身によい効果や発達を促すとされる、世界的サーカス団シルク・ドゥ・ソレイユが実践している「ソーシャル サーカス」を取り入れ活動していたそうです。

第3回目となる2020年の開催は、新型コロナウイルスの 感染拡大を踏まえ、方針を全面的に見直し、オンラインとリアルが融合した全く新しいプロジェクトとして挑戦することに。

「ヨコハマ・パラトリエンナーレ2020」開催概要

ヨコハマ・パラトリエンナーレ2020の開催概要は以下の通り。

障害者×アーティスト×一流の伴奏者が6年の実験と挑戦を経て、社会の既定概念を打ち破ります!

「ヨコハマ・パラトリエンナーレ2020」開催概要

主催:横浜ランデヴープロジェクト実行委員会、NPO法人スローレーベル

共催:横浜市(文化観光局・健康福祉局)

補助:令和2年度 文化庁 文化芸術創造拠点形成事業

協力:神奈川県遊技場協同組合・神奈川福祉事業協会、株式会社FREEing、株式会社JVCケンウッド、横浜市立みなとみらい本町小学校

チケット:無料 ※一部有料。

詳しくは公式HP(https://www.paratriennale.net/2020/)をご確認ください。

会期:【プレ会期】8月24日(月)〜

   【コア会期】11月18日(水)〜11月24日 (火)

場所:横浜市役所アトリウム(〒231-0005 神奈川県横浜市中区本町6丁目50-10)

   オンライン(https://www.paratriennale.net/2020/

出典:ヨコハマ・パラトリエンナーレ2020

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Trepo編集部

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